“針絡漢®”の“絡”の役割とは?!
“絡”は文字通り、「川=経絡」そのもの自体に対する治療となりますので、基本的に一点突破しかできない針治療の手法は不向きです。
つまり問題の経絡は、すでに“水路”という「水=気血水」の通り道としての役割が損なわれているわけですから、早急にそのルートの再開通を図らねばなりません。そのため点刺の治療だけでは不十分であり、正常な流通性を失った経絡全体を丸ごと治療の対象として考えなければなりません。
そこで考案されたのが経絡と神経の相関性を上手く利用した、“絡”すなわち「同調性神経経絡療法」なのです。
直接の針刺の代わりに、物理的もしくは電気的刺激を通して、間接的に経絡全体の活性化を図り、その停滞を解消していく手法です。
ほとんど体に無用な傷を付けないことが最大の特徴です。
“針絡漢®”による2年間続いた
肩関節痛の治療症例
(50歳代 男性)
来院までの経緯
時々右肩の突っ張り感を覚え始め、最初はあまり気にしていませんでしたが次第に痛みに変わり、そのうち右肩全体が常時嫌な痛みに襲われ、右上肢がほとんど自由に動かせなくなりました。同年、近医の整形外科を受診したところ、レントゲン上では異常なしと言われました。
それから一年間は局所の針治療に通ってみましたが、なかなか効果は上がらず、結局治療の継続を断念しました。しかし、デスクワークという仕事の関係上、普段より右手を酷使していることもあって、治療をやめてからは症状はさらに悪化の一途を辿りました。
通常、五十肩の類のような肩関節の障害は色々な臨床経過のパターンがありますが、時間の経過とともに場合によって自然治癒の傾向を示すことも見受けられます。しかし、残念ながらこの症例の場合は、むしろ厳しい現状に差し掛かっていました。
治療経過
平成20年秋頃、インターネット上で知り得て初めてDr呉の診察を受けました。それを機に、本格的に“針絡漢”による肩関節の治療を行うこととなりました。
初診時は、右肩関節はほぼ全方向において中等度から高度の運動制限が見られていました。特に回旋・回転運動の際に上腕や肘にまで強い痛みが放散するため、下の症例画像に示したように右腕を背部に回し、脊柱に沿わせて挙上させたり(結帯動作)、右手を後頭部に触れさせるようなこと(結髪動作)は全くできませんでした。
そこで、まず、一回目の経絡治療を施したところ、患者様の第一声は“右肩は今までのない軽さを感じる”と言われました。そして常時痛みを感じていた自発痛の程度もVAS(疼痛指数)の10から半分以下に軽減し、それに相まって肩関節全体の動きもかなり解放されるようになりました。
それ以降は週に1回の経絡治療をしばらく続けていましたが、最初の数回までは治療は即効性があったものの、その効果はほとんど1日しか持ちませんでした。
同年12月に入ってからは、さらに針による経穴の治療も併せて行ったところ、次第に効果が長く現れ始め、自発痛も治療前のVAS10から常時に4にまで落ち着くようになりました。
平成21年1月になると、朝方や過労の時以外には、ほとんど自発痛を意識しなくなりました。下の症例画像治療後に示したように右肩関節の可動域も大幅に改善され、無理な負担をかけない限り日常生活の支障はかなり緩和されてきました。現在も週に1度か2週に1度の治療を続けて、より一層症状の改善を目指しています。
〈右肩回旋障害〉
〈右肩回転障害〉
〈右肩回旋障害が改善〉
〈右肩回旋障害が改善〉
※症状によって治療法や治療の流れは大きく異なります。
院長のコメント
すでに発病より1年半以上も経過しているにも拘わらず、緩解傾向を一切示さず、疼痛性と拘縮性の運動障害がいつまでも併存している本症例の肩関節の病態は、まさに複雑を極めたものと考えられます。
肩関節は人体の関節の中で最も可動性が広い反面、それだけ構造的に損傷が起きやすい場所でもあります。東洋医学的な観点から見ても、人体を張り巡る12本の経絡のうち、上肢と体幹部とを結ぶ6本の経絡はすべて肩関節を潜り通っていますので、肩関節の障害は、実に経絡の変調と切っても切れない深い因果関係を持っています。
特に重症化した本症例のような難治性の場合は、まさしく「経絡の流れや働きなどの調整なくして、病状の改善なし」と言っても過言ではありません。もちろん、6本の経絡はそれぞれの属性や特徴があり、治療は決して容易ではありません。
しかし、基本的に当院が提唱する、(1)経絡の通り道の流れを良くする“経絡治療”と、(2)経絡の流れの分布度合いをよくする“経穴治療”を上手に組み合わせれば、必ず経絡活動の正常化、引いて肩関節の病状の緩和に繋がると考えます。その意味では、“針絡漢“の「同調性神経経絡療法」と、「バイオリズムのドクターバリ」は大変有用な治療手段となります。
“針絡漢®”による
右膝関節痛の治療症例
(71歳代 女性)
来院までの経緯
数年前より特に思い当たる原因はなく、階段の昇り降りで右膝の内側が痛むようになりました。夜間痛や自発痛は少ないものの、長く正坐はできませんでした。一年前より、さらに病状が一層ひどくなり、平地を歩行する際にも右膝の痛みが徐々に増してきたため、近所の整形外科を受診しました。
レントゲン検査などにて骨の変形、すなわち変形性膝関節症が認められました。消炎鎮痛剤の内服や、湿布薬を中心とした保存的治療をしばらく続けられましたが、一向に症状の好転が見られず、西洋医学の一般的治療の限界を感じられて、より適える治療方法を探してDr呉の“針絡漢療法”を受診されました。
治療経過
初診時、初めて受ける治療に緊張の面持ちで診察室に入ってこられましたが、治療後すぐに効果が現れると目を丸くして驚かれていました。消炎鎮痛剤とは比べ物にならないくらい痛みが大幅に軽減されたということでした。その効果は、一週間後に再び来院されたときまで続いていました。
1週間に1回の来院ペースで、5回目の治療以降は、階段の昇降にはほとんど大きなストレスを感じなくなったと、とても喜んでいるご様子でした。15回の治療を終えたところ、朝起床時に時々まだ軽度の痛みをごく短時間覚えることがありますが、基本的に日常生活上の支障は全く感じなくなったと言われます。
その後さらに治療ペースを2週間に1回に延ばして見ましたが、症状の再燃もなく、むしろ毎回の治療を終えるたびに、右膝の軽快感がより増していく様子でした。現在は初診されてからすでに5ヶ月経っておりますが、普段より良好な状態が続いています。
平成21年3月初めの再診時、患者様からは、最近では右膝が軽くなった分、むしろ左膝が重たい感じがするので、今度こそ寄り道を一切せずに、そろそろ左膝の治療をお願いしたい、と笑顔で話されていました。
院長のコメント
身体運動を支える筋肉・靭帯・骨・関節・腱などの運動器官の中で、使用年月とともに最も構造体の摩耗と機能の減退が激しいのは、言うまでもなく関節に他なりません。そのため、特に日常動作や歩行運動に欠かせない存在である膝関節の退行性変化は、必然的に中高年の方にとって、生活の品質(QOL)を脅かす最大の一因と考えられます。
但し、骨や軟骨の変性による関節構造体そのものの変化は、もちろん手術しない限り元の状態に戻すことは到底無理な話ですが、構造体の変化に伴う様々な病状は、決して全く治せないものではありません。病態の治癒は望めないが一刻も早く病状を封印し、QOLを高めると同時に、病態の二次的、三次的な悪化や進行を防止することが、この病気とのもっとも正しい付き合い方ではないでしょうか。“針絡漢”療法はこのような治療スタンスをサポートしています。
“針絡漢®”による両踵、
アキレス腱の痛み
(30歳代 男性)
来院までの経緯
学生の頃よりラグビーを続けており、何回も踵(かかと)やアキレス腱あたりに怪我をしてきましたが、いつも湿布薬などで対処していました。5~6年前から両踵の痛みが常態化し始め、特にスポーツの後に痛みを強く感じるようになりました。
ここ数ヶ月間は歩行以外にも、常に局所の強い違和感や痛みが続き、他院で針治療も受けましたが、あまり効果を感じられなかったといいます。インターネットを通してDr呉の経絡治療のことを知り、受診されました。
治療経過
今まで整形外科などで一度も精密検査を受けたことがないそうですが、視診や触診上では明らかな骨格構造の問題は見られませんでした。
病歴や病状および局所の圧痛点などから、恐らく筋腱や靭帯などの軟部組織の損傷に起因したものと考えられました。経絡治療はこの類の踵痛には大いに効果が期待できますが、何しろ病気の経過がかなり長いため、治療過程中の症状の変化により、さらに精密検査の必要性も説明させて頂きました。
まず一回目の治療は、症状のひどい右側の踵から始めました。踵を巡り最も痛みの発症に関わる二本の経絡を中心に治療の手を加えてみたところ、治療後には右踵の痛みはすっかり消えました。立ち上がった時に右の踵に全体重を思い切り掛けてみても、まったく痛みを感じなかったので、不思議に思われる顔がとても印象的でした。
一週間後に再診された時には、右踵痛は一回目の治療以降はすっかり良くなり、ラグビーの練習もいつもより楽に続けられるため、今回は是非左側も治療してほしいとのことでした。左側の症状は、もともと右側より若干軽かっただけに、治療の切れ味は右側以上の好感触が得られました。両踵痛の寛解はそれ以降も保たれ、2週間後3回目の来院を最後にして治療を終えました。
院長のコメント
とても劇的な症状の改善ぶりを実感させられた一症例ではないかと思います。踵骨棘(足底部の骨のとげ)や足底腱膜炎などに代表される踵の痛み、およびアキレス腱周囲炎の痛みは、一般的にはなかなか効果的な治療法がないのが現状です。
特に踵痛に対しては、欧米では外科的治療が積極的に取り組まれているようですが、我が国ではむしろ保存的治療による様子観察が主流となっています。
しかし、鎮痛消炎剤その他の理学療法の効果は、かなり短時間かつ限定的であり、自然治癒の可能性にかけて苦痛と闘いながら長時間待たなければならない患者側の心身的負担は、あまりにも大きいと言わざるを得ません。
そうした中、経絡治療は従来の治療法とはまるっきり異なった新しい次元の切り口で、関節炎、腱炎などの消痛に威力を発揮して、即時的効果を現わしています。
腰椎椎間板ヘルニアによる臀部、
下肢の痛み、シビレ
(50歳代 男性)
来院までの経緯
平成20年の5月中旬頃、腰痛を発症しました。ペインクリニックで腰部硬膜外ブロックを数回注射してもらいましたが、効果は限局的なものでした。その後ゴルフを再開したところ、同所の痛みはいつもの鈍痛から急に激痛に変わってしまいました。さらに痛みは腰部と臀部だけに止まらず、嫌なしびれ感とともに徐々に左下腿から左足背部、足の指にまで及びました。
そしていつしか歩行時痛はもとより、休み休みでないと歩くことすら思うままに行かなくなってしまいました。2軒の整形外科を回りMRIなどの検査にて、腰痛症、腰椎4番、5番のヘルニア、およびそれによる坐骨神経痛と診断されました。しかし治療にはなかなか有効な手段が見つからず、しばらくしてから知人の紹介でDr呉の診療を受けることとなりました。
治療経過
初診時、診察椅子に腰掛けるだけでもつらい様子でした。特に左下肢に締め付けられるような痛みと痺れがあり、大変冴えない表情でした。ゴルフが趣味で何としても続けられるようにしたいと、病気の早期回復を強く望んでおられました。
早速、神経経絡の治療を施したところ、治療後は痛みの軽減により下腿に力が入るようになり、大変歩きやすくなったと言われました。治療の効果を一層上げるために、これからしばらくはゴルフをお休みするように伝えました。これまでの神経ブロックに比べて、治療手技が遥かに簡単な上、その治療効果に驚きを隠せず、また治療自体に対しても大変自信を持たれたご様子で、通院治療に励むと意気込んでおられました。
それから、週1回のペースで治療を続け、4回目の治療の際には、これまで常用していた鎮痛剤を何とか断ち切ることができた、とうれしい話も聞くことができました。
しびれ感がまだ残りますが、立てなくなることはなくなり、休みながら歩かなければならないようなことの頻度も随分少なくなりました。
7回目の治療以降は、症状はより一層改善し、特に今までとても苦になっていた朝起床後の痛みも、知らないうちに楽になりつつあります。
何より以前は通院の際に5分おきに休まないと歩き続けられなかったのが、今は駅から休まずに歩いてクリニックまで直行できるようになったと笑顔で話されました。
治療を始めてから2ヶ月後、趣味のゴルフを再開してみることにしました。
最初は恐る恐るでしたが、1回目はまず難なく半日コースを終えることができました。
現在はその日の体調により、まだ足腰の痛み程度に開きはありますが、週2回位のペースでゴルフを楽しまれ、大変ありがたく思われています。
次の目標は、まさに痛みから解放される100%快適な生活を目指していきたいところです。
院長のコメント
腰椎ヘルニアに伴う典型的な坐骨神経痛の1症例ではないかと思います。
通常神経痛の発生源は椎間板の脱出や膨隆などによる神経根への直接の物理的圧迫と思われがちですが、実際その多くの場合は、むしろ圧迫された神経根そのもの、もしくはその周囲組織の二次的血行障害、浮腫および炎症反応に由来しています。
従いまして、積極的に局所の循環改善や炎症の鎮静化などにつとめることにより、往々に症状の十分な緩和に繋がる可能性があります。事実、この類のようなヘルニアの症例の場合は、症状が出ましたら即座に手術ということはほとんど見られません。
“針絡漢”の経絡治療は局所の滞った“気血水”の流れを改善することにより、消炎鎮痛の目的に大変適えているだけではなく、さらに局所の炎症反応を次第に抑えることにより、自然に同部のヘルニアの早期縮小や消失をも促し、引いてはヘルニアによる神経圧迫の完全解除に至るものと考えます。
発症の時期を問わず特に神経痛や痺れなどが続く腰椎症場合は、その治療効果を一度試してみる価値は、大きいといえましょう。